カクテルとマスターと渋谷
飲み会。
それは、私のような無気力根暗野郎にとって、この世の地獄といっても過言でない悪しき行儀。
大広間で行われる飲み会。そこに参加して大勢の人たちと一緒に盃を交わし、皆でギャーギャーピャーピャーと騒ぎたい、そんな願望は微塵もございません。
たった一人でいるときよりも、周りに大勢がいる時の方がより孤独を感じるもの。
コロナ渦の今現在は、飲み会が行われることはほとんど無くなって助かっていますが、こういった行事に参加して皆と同じように笑わなければならないという同調圧力には、我慢ならないものですね。
生ビールや日本酒といった、あたかも周りの人たちが好んで飲むような物にも好きにはなれない…。理由としては、ただ苦くて美味さが分からないというのもありますが、周りの人たちと同じものを飲みたくないという変なプライドを抱えているからでもあるのです。そうすると、彼らと同じように過ごし、同じように働き、同じように笑い合い、同じように歳を重ね、同じように死んでいく。
そんな有象無象に埋もれた人生だけは送りたくない!
ただ私には、ほんのちょっとした夢があるのです。
それは、自分だけの行きつけのバーを見つけ、マスターと仲良くなること。
私は日々の仕事での愚痴をこぼし、グラスを拭く寡黙なマスターは落ち着いた口調でアドバイスをくれる。
一人で黙々と何かに没頭することが性分の私にしては、なかなか変わった趣向でしょう?
だけれども、こういった他人には無い趣向や趣味をいくつも取り入れていくことによって、他の何者でもないオリジナルの「自分」が形成されていくと思うのです。
このように唯我独尊を謳う私は、福島から東京へ新幹線で向かうことにしました。
その目的のバーに向かうべくグーグルマップを起動したスマホを片手に、私は渋谷の夜の街を歩き回りました。バーへの方向を把握しつつ、右へ左へ何度も曲がったり…。時々、マップ上での現在位置が本当にこれであっているのか?とグーグルさんを疑いたくもなります。
渋谷と言ったら、昼夜問わずどこも人で溢れかえっているイメージがありましたが、大通りを外れた路上においては、本当に人気(ひとけ)が無いものなんですね。こういう静まり返った夜の道を一人で歩くと妙にワクワクするのは私だけでしょうか(笑)?
路上を歩いていたら神社を見つけ、ちょっとだけ寄り道も(笑)
夜中の神社というのも、また異色の雰囲気があって良き!
まるで鳥居が異世界への入り口なのではないかと錯覚してしまうところ。
マスターと仲良くとはいきませんでしたが、今まで自分が経験しなかったことを経験できた。この経験が将来的に何か大きな実りとなるとは思いませんが、ちょっとした話しのネタにはなるでしょう。