世の中で必要とされない人間などいない、と思いたい。
今回は、中学時代になにかの授業(?)の中で見た、ビデオについて語っていこうと思います。
とある高校を退学になった一人の青年のお話です。
その高校生は家庭でも高校でも他人とうまく強調できない情緒不安定な青年でした。
高校でも、クラスメイトや教師に対する暴力行為が絶えず。
学外でも警察沙汰になったこともあり、ついに学校側も彼を退学処分に。
校内でも校外でも敵意を向けられ、居場所を失い、誰も彼に近づこうとしませんでした。唯一青年のことを心配してくれたのは母親でした。
学生生活が終わった後も心は荒んだままで、その抑えようのない怒りの矛先はやがて両親へ向き始めました。
そんなある日、彼はボランティア活動をしてみないかという誘いを受けました。
高校を退学になって何ヶ月か経ち、あらかた落ち着きを取り戻した彼は、他にやることもないため、乗り気でないながらも参加することにしました。
ボランティア活動の当日、青年は老人ホームを訪れました。
到着すると、施設の担当のお姉さんがやってきて、
「君が○○(青年の名)君だね。今日はよろしく!」と、
明るいトーンで青年に言いました。
青年が今回行う仕事というのは、車椅子に乗った一人のお爺さんのお世話をして欲しいというもの。
お世話といってもそこまで大した業務ではなく、車椅子を引いて一緒に施設の中庭を散歩して欲しいというものでした。
青年と老人。お互いにダンマリしたまま、二人は中庭を散歩を始めました。
散歩を始めて10分ほど経ち、車椅子に乗った老人が徐に口を開きました。
「お前さん、学校退学になったんだって?」
「…ええ、まぁ。何もかもが上手くいかず、嫌になってしまって…」
老人からの問いに対して、落ち着いた口調で答える青年。
自身の考えがまとまらないのか、それは煮え切らず濁りを含んだ回答でした。
「そうか。…まぁ、色々あるさ!」
老人は、青年の行いについて口出しするでもなく、指摘するでもなく、ただただそう答えるのでした。
そうして老人との散歩を終えた後、施設の係員のお姉さんがやってきて、「お疲れ様!あのおじいさんも凄く喜んでいたよ、またいつでも遊びに来てよ。今日は本当にありがとうね!」と、まんべんの笑顔で青年に告げるのでした。
お姉さんがその場を去り、青年はしばらくキョトンとしたまま立ち止まっていました。
おじいさんの車いすを引き、大した会話も交わさず、だた中庭を散歩しただけ。
それでもあんなに感謝された。
今までは粗暴な態度で、人に暴力を振るい迷惑をかけ、皆から避けられていた。
そんな自分が人生で初めて感謝された瞬間だったのです。
この人生においてどんなに軽蔑され、どんなに煙たがられ、どんなにカッコ悪かろうとも、勇気を持って何かを始めれば、自分が誰かの役に立って感謝されるのかなと思ったのです。
ここ最近は私自身も、会社において多くの人間から嫌煙されてきて、どんなに努力しても認められず、生きる気力が消沈しかけていたところです。
そんな心境のなか、中学時代のこのエピソードの思い出し、
「こんな自分でも、中学時代に見たビデオの青年のように、誰かを喜ばせることが出来るのかな」と思ったのでした。